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猫だったのに、なんかGが湧いてきた
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 色付く木の葉達に、人々は見上げ。
そして、穏やかな空気は至福の時を紡ぐ。
もうすぐ来る死の季節。
白い雪が全てを覆い尽くす前に。
人々は、なにやら…木の葉達が見守る中、市場を開いているのだった。


―――。

「賑わっていますね…」

フリーマーケット。
其の言葉に惹かれ、歩く姿にしては少々違和感を覚えるだろうか。
身に纏うのはクロースアーマーとガントレット、そしてヘッドガード。
その姿はどちらかというと警備をしている、と言った方がしっくり来るかも知れない。
しかし、本人…
いや、黄色の体毛に、ヘッドガードから覗く耳は、人ではないのだが…
は、その様なつもりはないらしく、足取りも軽い。
市場を歩いていると、色々な商品があった。
ソレは、目を楽しませてくれたり。
人々の笑みに自然とつられて笑みが灯る…

「ん?」

やがて、大柄な男が並べるには、些か小さく見える装飾達に目が止まる。
足を止めた猫に気付いたのか、

「いらっしゃい」

男が此方を向いて笑みを向ける…猫は目を丸くした。
その様子を、商品に向けられたモノと勘違いしたのか、男は笑いながら装飾を手に取った。

「え? この指輪は何かって?
 少しばかり魔力を込めて作った魔除けの指輪…ってトコだな。」

…どうしよう。
元々、見て回るだけ…ましてや、この様な華やかな装飾の前で立ち止まるつもりはなかった。
しかし…何故だか。
周りで紅葉に負けないくらいに着飾った少女達を見ていると…
少し躊躇したモノの…膝を曲げ男と目線を合わせた。

「緑色の石はもともとは武器や防具を作るのに使う石なんだが、
 色見が良いのと自身の力を強めるとか言われていて戦士が身に着けたりしている品だ」

濃い緑色の石が嵌った、少し大振りの指輪を見せ男は言った。
猫は小さく頷く。

もし、頂くので在れば…
この島に来ている理由。
ソレを考えれば、と。猫は思っていた。

しかし。
男が鮮やかな…紅い色の石が嵌った華奢な指輪を見せた時であった。

「紅いのは石はうちの故郷じゃ女の子がよく身に着けている。
 恋愛の運気が上がるとか上がらないとか…」

「…恋愛…?」

「ああ」

不意に声が漏れる。その言葉に、男は小さく頷く。
話を黙って聞いていたが、まじまじと赤色の石を見つめる。
しかし、緩く頭を振って…視線を男に戻した。

その様子に、まだ話を聞くつもりだと思ったのか。
はたまた、何かを感じ取ったのか…
男は話を続ける。
深い茶色の中に一筋の白い光彩が入った石。
その石が嵌められ、細かい細工が施された指輪。

「この茶色の石は、純粋に魔除けとして身に着けられている」

ふむ、と小さく頷いて。
先ほどの様子を誤魔化すように、猫は言った。
内心、戸惑っていた。
なんで、あのような言葉に反応したのだろう、と…
説明が終わったのか、ニコリ、と笑いかけてきた男に、

「其方の、エメラル石…の、指輪を頂けますか?」

視線を男からは緑の石に移し…深緑の石を指差した。
折角、この様な場が設けられたのだから、何かを交換しなくては。
そう、どこか正義感のようなモノがあったのかも知れない。
しかし、どちらかといえば…この、猫には未だ分かっていない感情が支配していた。

「そうですね…」

何か、交換するモノはないか…
確か、岩塩の欠片は…嗚呼、宿か。
しかし、簡単にPSとで交換してしまって良いモノか…

…そう言えば。

ちゃら、と小さく金属が鳴る音。
男に差しだされたガントレットの掌に、小さな八方体の金属…に、細いチェーンが付いていた。
視線がペンダントに行くのが感じられると、猫は言葉を紡ぎ始める。

「このペンダントはオルゴールになっていましてね…」

何か仕掛けがあるのか。一つの面に軽く触れると、カチリ、という音と共に…
甲高い音ながらも、大人しい旋律が辺りに流れ始めた。
男の目が瞬かれるのが見えれば、視線を掌に戻す。
…もう一度、面に触れるとカチリ、という音と共に旋律は途切れた。

「…私の街の猫が作った物です。
 空気中の微量のマニャで音が鳴りますので、手入れは特に必要在りませんし…
 このオルゴール自体にも対魔術式がかけられておりますから、
 よほどひどい衝撃を与えにゃければ、半永久的に動き続ける、との事です」

…この島に来る前に、猫達の露天で買ったモノ…そう、この様な市場みたいな。
その猫は、少々変わっていた。
猫にしては人間の持つ技術に精通しており、自前の魔力と共にこんなモノを作ってしまう。
しかし、毎回作るモノは戦闘には関係のないモノばかり。
…元々、争いが嫌いな猫なのだ。
否、そう言う猫が街には多く住んでいる。
力を持ち、街を守ろうとする猫は少数…なれど、その一匹一匹が粒ぞろいなのだ…

だから。
猫は、この島にいる。
劣等感を無くす為に…

毎日、一匹だけで勉強をした。
毎日、一匹だけで訓練をした。
いつも、いつも…
寂しかった。
家族が気にしたのは、彼女の能力だけ。
上に行けるか。イケナイか。
家族が気にしたのは、家の名声だけ…

寂しい夜は。
この、オルゴールの旋律を聴いた。

だが。


視線をオルゴールから目の前の剣士に向けると、軽く首を傾げた。

「…いかがでしょう?
 殿方にはあまり興味が無い物かも知れませんし…PSの方も用意できますが」

男は其の言葉にオルゴールを手に取り、何やら吟味を始める。
その様子をじーっと見つめていたが…
先ほど言った言葉。
殿方には…
その場合、断られるかも知れない。
もしもそうなった場合、PSで払おうか。そう、ぼんやりと考えていた。

しかし、男の返答は猫の予想していなかったモノだった。

「…姐さん、こりゃ良い物過ぎる。」

「…え?」

困った顔をして溜め息をつく男に、猫からは気の抜けた声が漏れる。

「こんな精巧なカラクリ仕掛けの品だと、指輪1つの対価として
 いただくのはちょいと申し訳ないぜ。」

男が顎に手をやり考え込む。
その姿に、予想していなかった言葉に。
猫は弱ったように見つめ返すことが出来ず…
やがて、男は何かを思いついたのか、

「ちょっと待ってくれな。」

そう、後ろに置いてあった鞄の中を探り出す。
その様子を見ても、猫は目を丸くしながら見つめる事しかできなかった。

 

…じゃらじゃらと何かが金具がこすれる音が辺りの喧騒にとけ込んでいく。
やがて、男が此方へと戻ってくる。
その手には…
確かに、並べられていた指輪に付けられていたハズの紅い石。
…否。
また、新しい装飾…耳飾りだった。
猫が目を瞬かせる様子に、男はクリップの部分を持ち、猫によく見えるようにイヤリングを差し出す。
クリップに取り付けられた石のパーツが揺れて、赤い石は光を弾いてキラリと光った。
その小さな光を見た時、先ほどの気持ちが思い返されてきて…何かが胸にこみあげてくる。

「古い品で…しかも片方だけしかないが、コレも付けておこう。
 オレの故郷で割と名の通った鍛冶屋が作ったモノなんだが…。」

「ぇ…あ、あの、しかし…」

古い品。そして、名は知らぬが名の通った者の作った品。
それでは、此方の対価の方が安くなるのではないか。
それに、私は…
口を開く…が。

「この赤い石は姐さんの毛色にとても映えて似合う筈だ。」

二つの装飾を包みながら男は言った。
猫が言葉にするよりも早く、緑石の指輪と緋色の石は小さな布の中へと姿を消していたのだった。

「貴女の進む道に、善き風が吹く事を心より願う。」

「…」

差し出された包み。
確かに向けられた旅路の無事を祈る言葉。
…私は…
少し躊躇ったモノの…包みを受けとると、ゆっくりと立ち上がった。

「…ありがとうございます。貴方の行く先に、幸多からん事を」

頭を下げ…顔を上げた時には笑みを携え、暫くの間男を見つめていた。
男は嬉しそうに笑い…何かを呟く。
しかし、その声は雑踏や喧騒に紛れ…
やがて、猫は人の流れに乗りその場から離れた。

 

「…ニェギアにこの話をすれば喜びそう、ですね」

街に住んでいる、ペンダントを作った猫。
正当な評価を人間から得られたと在れば、彼は喜ぶだろう、と。
暗くなり始めた空を見上げ呟いた。
ふ、と、包みから装飾達を取り出す。
…紅い雫を見やれば、その目は微かに細くなった。

「…確かに…私は…騎士、修行の為に、この島に来たはず。
 にゃのですが…ね」

しかし、猫は感じ取っていた。
確かに、あの言葉を聞いた時にわき出た感情。
これは、騎士としての感情ではなく。
雌としての感情。
今まで封じられてきた感情…

「…この島に来てから…」

猫は小さく笑った。
この島に来てから、確かに。
力だけではなく、違う何かも育っている事を…
感じ取っていたのだった。

紅い雫を左耳に着けると、その違和感…に、恥ずかしげに小さく笑んで。
深い緑の指輪は掌の上に乗せ。

「…楓殿に鎖を作ってもらいましょうか…」

そのガントレットの上では着けられないから。
小さく息を吐き、宿へと歩き出した。

 


もう、独りで旋律を聴く必要はない。
何故なら。

助け合える…守るべき、仲間が出来たのだから。


カレン・ヌゥト・クサナギ(158)様の指輪を購入させて頂きました。

(実際に指輪を購入した時はレンノスケさんだったのですが)

そして、カレン様とのやりとりをベースに書かせて頂きました…

と言うよりも、書き足した、と言った方が正しいかも知れません。

もしも、おいおい自分で書けよ、とか思ってらっしゃいましたらゴメンナサイ(汗

既に決められてる動きの範囲内で新たに書くのは難しくて…orz


私的には色々な出品とかがあって楽しかったと思います。

でも、全部を全部盛り込むわけにはいきませんし…まぁ…

特に、食べ物関係で絡みたかったな、とか思いつつ。

普通に文字数足りないですか。そうですか。



因みに、偽島の更新時に載った日記より、少し変えてあります。

まぁ、後から見直して、こっちの表現の方が良いや、とか思う時はありますよね。




…そして、文コミュの日記が全部、なんと言いますか。

イイ!


読んでて面白かったであります。

自分のは…なんと言いますか。

自分しか知らないであろう情報が沢山盛り込まれてるんだろうなぁ、とか思いつつ。

他人の目から見たらどうなるんだろう、とか。

そう言う見方が出来ない背後であります。うごご。




次は温泉、久しぶりに続けて日記を書くので、どうなるやらやら。

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猫やってました。猫騎士、赤毛の猫、女好き淫魔猫。
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ヘタレです。
お絵かきがそれなりに好きです。ゲームも好きなんです。

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