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猫だったのに、なんかGが湧いてきた
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――来る、バレンタインの日。

猫は、みんなにチョコを配り歩きました。

渡したのは、猫の住んでいる街…

猫達が住むレンガ街…

で、作られているチョコでした。

隠し味としてマタタビが入っています。

バレンタインの日は、雄も雌もチョコを食べて…

夜はほろ酔い気分で目を閉ざすのが恒例の事でした。

…猫も、ソレが、とても、大好きでした…




しかし、今年は、猫は街には居ませんでした。

居るのは、遺跡がある島…

毎日、戦う術…生きる術を研鑽し、休む暇は遺跡の中ではあまりありません…

でも、猫は、チョコを渡しました。




だって…

猫も、たまには、そう言う日があって、良いんじゃないか、って。

思ったのだそうです。

…猫は毎年、雄にも雌にもチョコを渡していました。

沢山貰えれば、ハッピーじゃない?

そう、考えていたからでした。




そして、夜。

猫は自分で買ったチョコを食べる…

ハズ、でした。

しかし、その手に持っているのは…

黄色い包み。

なにか、凄い形をしているチョコらしきモノ。

ホワイトシュガーがかかった生チョコ。

小さなセロファンに巻かれているチョコ…

沢山のチョコを、持っていました。

みんな。

みんな、島で出会った人達から貰ったチョコでした。



…猫は遺跡で仮初めの月を見上げます。

一口、口に含めば、甘みと共に、心地よさを感じたのでした。

マタタビとは違う、何か、きゅん、と来るような…

…いつもとは違うバレンタイン。

でも、こんなバレンタインも良いな…

そう、思ったとか。



ハッピーバレンタイン♪――

拍手

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――運を天に任せる。

――大きな運は辺りにひずみをもたらし…

――不幸を連ねるのだという。

――…それでも、あなたは幸運でありたいですか?


…平原。
猫達は壁に挟まれた平原…時々床…を歩いていました。
情報によれば、その先にある森の向こうに下の階へと向かう階段があるらしいのです。
…しかし、それよりも…どうも、この遺跡には野生の動物の他にも障害があるらしく…
そのせいで足止めを喰らっている人々もいるらしいのです…
猫達も、ソレと対面する前に遺跡の外に戻ったのですが…
ずっと足止めを喰らっているわけにも行かず、不思議な魔法陣を目指しつつ、その障害と相見える事を考えたのでした。



「にゃー…」
猫が小さく鳴くと、辺りを見回します。
「それにしても…にゃんだか、あの雑草を全然見かけにゃいにゃー…」
あの雑草…
モッサッァァァ!と、激しく叫び、モッサァァァァ!と気合い充分に攻撃を仕掛けてくる、あの緑のマッチョ…の、事でした。
元、その暑苦しいマッチョだった少年を見ながら、猫は話を続けます。
「それに、可愛いにゃんにゃんが居るって聞いてたんだけどニャー…」
「…もさ…」
こっち見て言うな…と思っているのかどうかは知りませんが、少年は小さく呟きます。
その様子を見ながら、とんがり帽子を被った女の子は言いました。
「…でも、前に来た時よりも…」
ふい、と視線を落とす女の子に、兎さんが小さく震えました。
「…確かに、感じるっすよ」
「何がじゃ?」
全然そういう物を感じていないのか、兎さんの近くにいた茄子が尋ねます。
「…何というか…捕食者の目、というか…」
「…あの化け猫のことか?」
兎さんの真面目な話を、本気なのか冗談なのか分からぬ調子で鳥男が言いました。
…この鳥男には元々、恐怖心というか、そういうモノが欠如しているように見えるので、殺気があってもなくても同じでしょう。
後ろで猫が怒って居ますが、鳥男はいつものように笑いながらあしらうのでした。
…が、しかし…

「グルル…」
「ぶぶぶぶぶぶぶ…」
「ゥゥー…」


「んにゃ?」
猫が辺りを見回します。
がさがさと、草原に何かが居る気配…
「…囲まれてますね」
青年が矢をつがえると、目を細め、辺りを見回します。
「そ、それより…さっきの唸り声って…」
兎さんは耳を垂らしながら震えています。
「んにゃー…」
猫がその言葉に小さく頷いて…
「イリオモテヤマネコ…通称、やままy」

ザッ…

「グルルル…」
「…ミル、アレ、ホントにヤママヤーですたい?」
茄子が姿を現した狼を見ながら猫に尋ねました。
「た、食べられたくないっすよ…」
そして、大きくなったとは言え、兎は兎なのか、本能で狼を恐れているようで…
しかし、その様子を冷ややかな目で見つめる猫と茄子…
「…」
「…」
「にゃー、茄子」
「なんじゃ、ミル」
「どっちかとゆーと、さらが狩る側だと思わにゃー?」
「おいも思ってた所じゃ」
「な、何言ってるっすかー!?」
ガクガク震えながら、斧を構える兎さん。
「いや、にゃー…その斧を見てると…狩人と獲物、とゆーか…」
「ゥゥゥー…」
歯をむき出し、威嚇しながら近づいてくる狼に猫が小さく息を吐きました。
「にゃ。にゃー、今、前がさらともさだけだと心配だからニャー…ニャーも前にいるかニャ…」
「ミル…」
少しじーんと来る兎さん…ですが…
「でも、にゃんというか、さらしか狙われにゃー気がするのはニャーだけニャ?」
手袋から針を出しながら、猫の目はいつしか線になっており…
「ちょ、な、なんでっすか!?」
「だって…もさは雑草だし、茄子は茄子だし…狼が草食べるにゃんて聞いたことにゃいにゃ…」
「…もさ…」
小さく頷く少年に、兎さんは目を向けますが、また視線は猫に戻します。
「んで…ニャーとさらだと…食べる所が…」
「なっ!?」
「それに、猫と兎、どっちが美味しいかと言われると…」
す、と視線を逸らす猫に大抗議の兎さん。
しかし、いい加減痺れを切らしてきたのか…狼がじりじりと距離を詰めていきます。
「む。にゃー…まぁ、頑張るかニャー…食べられたくにゃーし」
「ぁ、当たり前っす!」
「ソレに、狼だからニャー…」
「…?」
猫が小さく呟いた言葉に皆が視線を向け…
「…」
ポッ。
猫が両手を自身の頬に当て、頬を赤らめます。
「な、なんっすか…?」
「ニャーがあんまり可愛いから、狼が送り狼ににゃっちゃうかも…」
「…」
「…」
「…」
「にゃーん、ソレで巣で、食べちゃうぞ、って耳元で囁かr」
「「「それはない」」」
「っすね」
「ですたい」
「…もさ…」
一人で勝手に妄想している猫に皆で突っ込む(人外の)男性陣。
「んにゃっ!?」
息があった三人(…?)に、猫が振り向きます。
…が、視線を逸らす三人(?)。
むきー、と怒る猫を余所に、茄子が言いました。
「ソレより、ぶぶぶぶ、とか聞こえたような…」
「…また、豚さんっすかねぇ…」
ちょっと嫌そうな顔をする兎さんですが、茄子が続けます。
「そっちの方がよかばい?狼もそっちの方に気を向けてくれるたい」
「…!…そう言えば、そうっすね」
頷く兎さん。
そして、

「ぶぶぶぶ…」

大きくなっていく音に、そちらの方を見る兎さん。
「やったっす、コレでさらは狙われn」

ガサッ。

「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」

「ニャー」
「何っすか、ミル…」
「大きな蜂だにゃー…」
出てきたのは、等身大ほどの大きな蜂でした…
「ホントッスね…もう、本当に泣きっ面に蜂っす…」
耳がしょげる兎さんに猫は気にせず針を構え…
「…にゃふ、にゃんとゆーか、因縁対決?」
「なんでじゃ?」
「同じ針同士…しかも、あの子…」
子?首を傾げる一同でしたが、気にせずに猫は言いました。
「…雌にゃ。あの蜂」
にゃふふふふふふ。
怪しげに笑う猫に、皆が嫌な予感がしました。
「にゃんとゆーか、コレは絶対勝たにゃーとにゃー!!」
妙に気合いが入っていく猫に、嫌な予感は杞憂だったと感じた一同でしたが…
「…なんで、こんなに気合いが入るっすかねぇ…?」
「…さぁ…おいに聞かれても困るたい…」
理由が分からず、眉をひそめました。
が、狼と大きな蜂との距離はほとんど縮まっていました…
「にゃっ、メロメロになるニャーッ♪」
猫が魔力を空気に漂わせると、針を投げます。
ソレと同時に、皆の間合いは一気に縮まったのでした。

拍手

 ――とある、聖職者は言いました。

――とある、聖職者は死にました。

――とある、聖職者を人々は崇めたのでした。

――だから、人々は愛したのでした。

 

「にゃーぁ!にゃんで止めるのにゃーー!!」
猫は兎さんに羽交い締めされていました。
「落ち着くっす!ミル、アレは食べちゃダメっす!!」
…練習試合…に、なってしまった一行。
何故なら、お腹を空かせた猫が、この島では珍しくない…動く食べ物を食べようとしたからでした。
やむなく練習試合をし…猫を救うために相手を倒したところを、今度は相手を守るために羽交い締めしているのです。
「ふにゃぁぁ!鯛焼き!にゃーは鯛焼きを食べるのにゃぁぁ!!」
じたばたと猫が暴れますが、猫と兎さんの力には大きく差がありました。
兎さんはじたばたとする猫を羽交い締めしながら、相手方…鯛焼きのPTに、
「じゃ、お手合わせ感謝するっす」
と、軽く礼を言うと、連れの茄子と共にそのPTから遠ざかりました。


「…ぶーぶー」
結局、猫は鯛焼きを食べ損ねました。
そして、美味しい草とパンくずから作られた料理で我慢させられるのでした。
「しょうが無いっすよ。他の美味しい物を食べるとなると、お金払わなくちゃならないっす」
小さくため息をつく兎さんに、ぶーぶー言いながら食事している猫。
その光景は…人が多い中、かすんで見えました。


「…にゃー!甘い物ー!!」
猫は叫びながら歩いていきます。
その光景は…やはり、人が多い中ではかすんで見えるのでした。
「むぅ、もさもアリもどこに行ったのにゃ!?」
いつも連れている少年と…
蚯蚓を連れていたはずなのに、いつの間にか大きいアリに変わっていたというアリ(名前)…
を、猫は探しているのでした。
何故なら…もうすぐ魔法陣に行き、遺跡内に行くため…
そして、いつの間にかついてきていたアリを、犬の獣人の女の子にあげるためでした。
その女の子は、狐を連れているのですが…何かと、遺跡の中の生物の他に、遺跡探索者とも戦っているらしく、大変だから、と連れていかせる…
のも、あるのですが。
一番の理由はお金でした。
一番安い保存食が五つも買える…猫は惹かれました。
…まぁ、いきなりついてきたアリよりも、もっと良いペットがついてくるに違いない、という願望やも妄想があるのでしょうか。
「ふにゃあああ!!」
全然見つかる気配はなく、叫ぶ猫。
…しかし、周りの人は特に気にしていませんでした。
何故ならば、周りでは猫の他にも叫んでいる人や…
鬼の仮面をかぶってる人がどうの、とか。
豆まきがどうの、とか。
太巻きかじりつく方角はどうの、だとか。
バレンタインのチョコセール、だとか…
「…にゃあ…」
一気に興味が注がれます。
向いた方向はバレンタインのチョコセール…
猫は財布…革袋の中をのぞき込みます。
「…にゃ、にゃ…にゃんこも買える…」
だらだら。よだれが出てくる猫…ですが、その足は止まりました。
「ミュリィっ!!」
猫の名前を呼ぶ声。
猫は少し不機嫌そうに振り返る猫。
しかし、その目は丸くなりました。
「にゃ、にゃむりん!?」
其処にはメイド服を着て。
眼鏡をかけた。
学校が休みだけれど、いつ呼び出されるか分からない。
だから、今は時計台のあるレンガ街でのんべんだらりとしているはずの。
雄の虎猫が居ました。
「にゃ、久しぶりにゃー♪」
その冥土猫は片手を挙げて猫に手を振りました。
「にゃにゃっ!?にゃ、にゃんでにゃむりんがココに居るのにゃ!?」
猫は冥土猫に駆け寄ると、矢継ぎ早に訪ねます。
「とゆーか、学校は良いのにゃ!?」
「んにゃー」
冥土猫はヘッドドレスとバンダナを直しながら言いました。
「にゃ、色んにゃ噂があるけど、永久休校…?」
軽く首をかしげると、爪を立てます。
「ほら、くりゅもココに来てるしにゃー」
猫が目を丸く…口が開いたままです。
「にゃーはそれでも良いけどにゃー」
「…ニャーが行けば良かったにゃ…!!」
猫が冥土猫の言葉に拳をふるわせます。
すごく…すごく、悔しいようです。
「にゃ、それより」
冥土猫がニッ、と不敵に笑い、手に持っていた鞄を持ち上げて見せます。
「この時期は、バレンタイン…じゃ、にゃーの?お嬢様?」
眼鏡をかけ直すと、猫に鞄を差し出しました。
猫は鞄を受け取ると、顔を輝かせて中身を見ています。
「にゃー、本当はお正月に帰ってきた時に渡そうと思ったんだけどニャー」
冥土猫はため息をつきながら言いました。
「ミュリィ、帰ってこにゃいんだもんにゃー…いっぱい渡すクセn」
「にゃーにゃー」
冥土猫の言葉を猫が遮ると、中に入っていた長方形の箱を軽く持ち上げて言いました。
「食べて良い?」
…その猫の顔はすごく輝いていました。
が、冥土猫は微妙な顔をしています。
「…にゃあ…ニャーの話、聞いてたにゃ?」
ため息をつくと、猫に言いました。
「ニャー。ダメにゃダメにゃ。OKにしたら、ミュリィが全部食べちゃうにゃ」
「にゃーん」
何も言い返せない猫に小さく息をつく冥土猫…
しかし、少しうれしそうに言いました。
「…ま。ミュリィが元気そうで良かったにゃ」
くす、と笑うと、猫に背を向けます。
「じゃ、ニャーはバカンスして帰るにゃ」
「にゃ!?」
「運が良ければ、レスにゃんとか会えるしにゃー」
「ふにゃーん!!」
そんな猫に泣きながら言いました。
「ニャーも、バカンス、したいのにぃーーーーーーー!!」
にゃははははん♪とキラキラを出しながら、去っていく眼鏡冥土猫。
フニャァーン!!と、それを泣きながら見送る猫。
その光景は結構どころかかなり変な光景でしたが、この島ではもっと変な光景もあるモノです…
特に、気になる人はいなかったのでした。


「…にゃ!これで準備万端にゃ♪」
猫達は魔法陣の前にいました。
その手には、新調した補助用のピック。
着ているのは新しく作ってもらった服。
胸の前に青い猫のペンダント。
そして…担いでいるのは一つの鞄…
「…ミル、何っすか?その鞄…」
兎さんが尋ねました。
猫の性格して、そんなにモノを持って行こうとは思わないはず…
そもそも、猫は力がないから、そんなに持っているとつらいはずなのに…
兎さんは軽く首をかしげながら見ています。
「にゃにゃ」
猫はくす、と笑い…
「にゃーいしょっ!」
にひ、と笑うと魔法陣に踏み込んだのでした。


…そして。
来る、二月十四日。
聖バレンタインデー。
島の遺跡の中で、所々走り回る猫の姿があった。
「にゃにゃん、美味しいチョコのお届けにゃっ♪」
猫の手には長方形型の箱…
その箱を手渡すと、少し離れます。
猫はニッ、と笑うと両の手は帽子のつばに。
帽子を深くかぶり直すと、微笑んで言いました。
「はっぴーばーれんたいんっ♪」

拍手

――足し算で考える者も居ると思う。

――数が多ければ強い。大いに結構!

――でも…実際には、かけ算も混じっているような気がしてならない。

――足を引っぱれば…強者も弱者に成り果てる。


「…んにゃ…」
ぐてーん、と伸びている猫が一匹。
四対二。ソレにもかかわらず、猫達は負けていました。
「にゃーんでー?」
ぐてーん、としながら尻尾をペタリ。
目に見えてやる気の無さが伺えます。
「…さぁ…」
少年は何処吹く風。
猫が倒れていようと、練習で負けようと特に気にしないようで…
「…」
猫と組んでいる青年は獲物を探していて聞く耳を持ちませんでした。
「…」
「…」
ふと、ぐてーん、としていた猫が顔を上げ、少年の方を見ます。
「にゃあ」
「…?」
「あの蚯蚓何処行ったにゃ?」
…練習試合の前に、猫のお肉は良いお肉、と言っていたサングラスをかけた蚯蚓…
が、確かに一緒に戦っていたのは覚えているのですが…
その姿が見えなかったのです。
少年はしばし固まっていましたが…
「…そこにいる…」
指差した先には穴一つ。
「…?」
猫は怪訝そうに穴を見つめます。
「…何やってるのにゃ?」
「…さぁ…」
…練習試合前に、ついていくのを辞める、と言っていた蚯蚓の言葉を思い出したのか…
少年はしばし躊躇し、軽く首を傾げました。
「…むぅ」
少年の様子に釈然としないながらも、視線を青年の方に向けました。
「にゃーぁ、見つかっt」
「…」
「…」
「…」
猫の軽口はそのオーラの前では口を噤まざるを得ませんでした。
青年の周りには、目に見えて黒い…禍々しいオーラが漂っています。
「…にゃあ…」
猫はか細く鳴いて、少年の方を見ました。
「…早く、蚯蚓連れてくるにゃ…」
「…もさ…?」
首を傾げる少年に、猫は急かします。
「早く!早くしにゃーと、矛先がニャー達に向くニャ…!」
こそこそ。
少年はその言葉を聞くと、少し青ざめ…穴に手を突っ込みました。
猫は立ち上がり、針を手袋から出します。
…しばらくして、後ろの方から声が聞こえてきました。
「いでででででっ!な、何すんだよっ!」
…蚯蚓の声。
恐らく、少年が掴んで穴から引っこ抜いたのでしょうか。
「…もさ…」
小さく呟く少年に、蚯蚓は尚も続けます。
「だから、なんでオレが危ない目に遭わなくちゃなんn」
「…」
「…」
「…」
「…」
…蚯蚓も感じ取ったのでしょうか…この重々しい空気を…
口を噤むと、コソコソと少年と何かを喋り始めました。
「ちょ、ちょっと待てよ、なんだよ、あのヤバイの」
「…もさ…」
「答えになってねぇって!もう、ヤバイ事はゴメンだぜぇ…」
後ろから溜め息が聞こえると、前から声も聞こえました。
「見つけた…」
青年の声…その言葉に猫達は身震いすると身構えました。
更に前方…黒魔術を行使する黒豚…
「…なんつーか…ご愁傷様だぜ…」
蚯蚓のポツリと呟いた言葉…
今度は四対一で、先ほどの練習試合の鬱憤を晴らそうというのですから…
確かにそうだったのでした。



…しばらくして、猫の溜め息がその場に響きました。
山岳を降りて、知り合いに会ってきたらしく…また山岳に戻ってきたらしい。
「…それにしても、みんにゃ、容赦にゃいにゃー」
「おめーもマジでやってたじゃネェか」
そんな猫の呟きにも突っ込む蚯蚓。
「でも…にゃー…結構、キツイニャ…」
猫は額の汗を拭い…辺りを見回します。
その様子に少年は軽く首を傾げました。
「…にゃんだか、変にゃ感じニャ…」
「もさ…?」
「体が軽い、よーにゃ、気持ち悪い、よーにゃ…」
「はぁ、何言ってンだ、おm」


パシュッ…



「にゃ?」
見れば、景色が変わっていました。
体の不調も綺麗サッパリ無くなっていて…猫は辺りを見回します。
「遺跡…の、外…?」
…ようやく思い出してきました…
数日前、黒豚との勝負に負けた兎さんと青年の調子が悪そうにしていたときのこと…
こんな風に、いきなり外に転送されてしまって、戸惑った事があったのです…
「ふにゃー…にゃんとゆーか…あまり、気持ちいい事じゃにゃいのにゃ」
むぅん、と唸る猫の前に現れる人影…
「…いた…」
「ぁ、もさ…ちょうど良かったニャ。探す手間が省けたにゃ…」
猫は尻尾をくねらせます…が、一つ気になった事があったのか、もさを見つめます。
「…蚯蚓は?」
「…?」
首を傾げる少年。
そして、すぐ側で首を傾げる大きな蟻さん。
「…にゃ?」
「もさ?」
「?」
三匹が見つめ合い、首を傾げるという、奇妙な光景が遺跡外で見られたという。



「ぁ、ミル、見つけたっす」
「にゃー、さらにゃー、茄子ー」
手を振りながら、近寄る猫に、兎さんと茄子が目を瞬かせます。
「…蚯蚓じゃなかったですたい?」
「にゃーも知らにゃー」
目が線になる猫。そして、その隣で首を傾げる蟻さん…
「…まぁ、良いっす」
「良いのにゃ?」
「あまり大きな問題じゃないっす」
首を反対側に傾げる蟻さんを無視して兎さんが続けます。
「それより、買い物は済ませたっすか?」
「んにゃ。ある程度はにゃー」
ごそごそ、とカバンの中を見せ始めました。
「ポーションにー、保存食にー…」
「…それにしても、いっぱい買い込んだたい」
「んにゃ、この石がこの島での通過っぽいからにゃー」
じゃら、と手のひらに転がしたのは…
パワーストーン…と呼ばれる小さな石でした。
「この島から出たら、どうせこれは使えにゃーしにゃ」
そう言うと、革袋の中に戻します…
「でも、コレだけあったら次の探索は楽っすね」
「…」
…急に黙りこくる猫。
「にゃあ」
「…何じゃ?」
茄子をツンツンと突っつき…じゃらり、とパワーストーンを渡しました。
「…どうしたんじゃ?」
「にゃー、食料買ってきて欲しいにゃ」
「は?」
猫が頬を掻きながら、鞄の奥底から何かを取り出しました。
「…これは…?」
手の中にあったのは、青い光を放つ宝石でした。
「んにゃ。み○ずバーガーと、パノに作ってもらった料理を一緒に持って…ぼけー、ってしてたら…」
えへ。と照れ笑いをしながら頭を掻く猫。
「だから、もっとやれば、もっとキラキラが…」
えへへへへ。と少し欲望に満ちた笑みを浮かべる猫…
ですが…
茄子から湯気が飛び出し、跳ね始めました。
…決して、食べ頃、と言うワケでは有りません。
「おいの料理、食べてないですと!?」
「にゃーにゃー、怒らにゃー、怒らにゃー!」
「ミルは一日ご飯抜きたい!」
「ふにゃっ!?一日じゃにゃくて!?」
ぎゃーぎゃー。
猫と茄子が言い争っています…
一方的に猫が負けているのですが…
「…元気っすね」
「…もさ…」



「…ふにゃあ…」
しょぼーん。
膝を抱きながら猫は小さく鳴きました。
お腹の虫も小さく鳴きます。
「にゃーん、一日ご飯にゃしは酷いにゃー…」
よよ。と誰も見ていないにもかかわらず、泣き真似をして…
虚しくなってきたのか、すっく、と立ち上がると海に叫ぶのでした。
「お腹へったぁぁぁ!!バカンスしたいニャァァァ!!」



しばらくして、聞こえてきたのは海のさざ波の音でした。
「ふにゃー、にゃー、甘いもの食べたいにゃー…」
くるりと踵を返し…皆の元に戻る事にしたらしく…
「にゃー、ケーキとか、パイとか…」
しかし、お腹が減っているため余り集中せずに歩いていきます。
周りの状況など、見えていないのでしょう…
「にゃ、あんこも良いよにゃ…っ!?」

どん。

何かにぶつかり、慌ててソレを見ます。
「にゃ、ゴメンにゃー…にゃ?」
…見れば…それは…

じゅるり。




「…ぁ、アレじゃなかと?」
茄子と兎さんは猫の行方を捜していました。
もうすぐ魔法陣に乗り込むのだというのに、全然姿を見せなかったためでした…
「…ミルー…?」
なんだか、猫の様子がおかしい事に気付いた兎さんはその目の前にあるモノを見てみると…
「…タイヤキ、っすか?」
見れば、タイヤキが猫に対して何かを怒っています。
しかし、猫は微動だにしていません…
「…タイヤキもこの島じゃ動くっすね」
「まぁ、ありえない事じゃなかと」
茄子が兎さんの言葉にそう言うと、猫の隣に行き…
「すまんと、ウチのパーティメンバーが迷惑かけた…?」
じゅるり。
すぐ側で聞こえた音にその方向を向きます。
…見れば、猫の口元にはよだれが…
「!?」
…食事を抜かしていた猫には、それはそれはとても美味しそうに見えたのでしょうか…
一方タイヤキはと言うと、身の危険を感じたのか、慌てて離れて仲間を呼び…
「…練習試合、するしかないっすかねぇ?」
「…しょうがなかと…行くたい」
不承不承、兎さんと茄子も巻き込まれる事となったのでした。
…こんな事なら、最初からご飯抜きにしなければ良かったと、少し後悔していたとかしていなかったとか。

拍手

――時は流転する。

――立ち止まっている間にも、走っている間にも。

――何人たりともその動きを遮ることは出来ないのだと…

――太陽と月は追いかけっこを続けます。



「…ぉぉー」
猫が声を漏らします。
少年の魔法の飛礫でひっくり返った蟻さん。
時々、ぴくぴくと足を振るわせながら、戦う気力はないことを物語らせていました。
「…もっさー、ゆっくりしててー…」
少年は溜め息をつき、皆の方に戻ってきました。
…さっきの蟻さんで最後。
特に危なげもなく戦いを終えたのでした。
「んにゃー。余裕、にゃー?」
大きく背伸びをして猫は言いました。
「でも、さら達は結構本気で行ってたっすけどねぇ」
兎さんが、蟻さんの折れた牙を拾い集めています。
「…さらの攻撃は避けられてたっすけど」
その折れた牙を青年と猫に渡すと、軽く肩をすくめる…仕草をしてみせました。
「んにゃ。強い敵と戦うことににゃったら当てれば良いのにゃ」
牙をポーチに入れながら言う猫に、兎さんは溜め息をついてこう言ったのでした。
「…出来れば、苦労はしないっす」


…バトルが終わると、皆が集まり…
砂地と水場の中に、ぽつん、とそびえている山岳を登り初めました。
どうも、強者の気配がするのだとか、しないのだとか…
「…んにゃ。でも、まぁ…ニャー達が先に見つければ、1対2で戦えるよにゃ」
そんな無責任で逃げの方向の猫の言葉。
しかし、ココでは弱肉強食…
正攻法で戦えるほどの力がないのに、綺麗事は言ってられないのが現状でした。
「…まぁ、卑怯なんだがな」
上半身が鳥の男がポツリと呟きました。


「…んにゃ?」
パンくずを口に入れながら、猫はぴくり、と耳を動かしていました。
「…どうしたんですか?」
近くで蚯蚓から手に入った肉を焼いている少女が軽く首を傾げます。
その声に気付いたのか、少しだけ目を向け、
「…声が聞こえたニャ」
そう言うと、また目線を虚空…
…いや、よく見れば山の麓の方…
…に向けました。
「…」
少女はその様子を時々見つつも、玉葱を切り始めました。

…しばらくして。

玉葱とお肉を串に刺したモノを火で炙り始めた時、猫は少女の方に目を戻しました。
「…んにゃ」
その料理に一つ瞬きをすると、目が線のように細くなりました。
「…で…どうだったんですか…?」
焼き加減を見ながら少女は尋ねます。
「んにゃー…にゃ、ドコかで聞いたことのある声が聞こえたニャ」
猫はんー、と唸りながら、ぱっとしない答えを返します。
今度は少女の目が瞬きました。
「…どこか?」
「にゃ、どこか…えっと…うんと…」
むむーぅ、とこめかみに指を当て、うりうりと刺激を繰り返し…
お肉の肉汁がしたたるくらいになった頃、猫は顔を上げました。
「分かったニャ、お風呂場にゃ」
「…はい?」
いきなり言いだした言葉に、やはり少女は何の事だか分かりません。
この島にお風呂場なんてあったでしょうか…?
あったら、活用している人も多いでしょうし、何より少女も入りたい。
それなのに、目の前の猫の答えは…
「んにゃ。何かのお風呂の遺跡にゃー。夜にゃ夜にゃ、色んにゃ人が集まるんだにゃー」
耳をビコビコと動かしながら言った猫の言葉に、少女は要約納得した表情を浮かべます。
…風呂場跡。確かに、お風呂場ではあるけれども…
少し期待していた少女は小さく息を吐きました。
その様子に猫は気付かなかったのか、ニコニコとしながら、
「んにゃ。少し遠いけどにゃー。ココで戦い終わったら、外に戻るんだよにゃ?」
少女に言いました。
少女の返答は、一つ首を縦に振ること…ソレを見て、猫は、
「にゃー、にゃーもちょっとしたアクセサリーにゃら作れるからにゃ…ちょっち行ってくるニャ」
と尻尾をうねらせ…串焼きに目を向けました。
「…にゃ、玉葱…出来れば、抜いてほs」
「出来ません」
ぴしゃり。
少女は猫の上目遣いのお願いを見もせずに打ち切ります。
「…」
猫は肩を落とし、腰を下ろしました。


「んにゃー、これ、イジメかにゃー?」
ツーマンセル…強い相手とはコレの方が良いでしょ、という話になったのでした。
そんな中、猫と組むことになった青年は一方的に猫の愚痴を聞かされるのでした。
「だってにゃー、玉葱って、にゃーは猫にゃのにゃー、ひどくにゃー?」
「…」
無言。弱ったような表情を浮かべる青年に、おかまいなしに喋り続ける猫。
「茄子にゃんてにゃー、みみず丸出しバーガーニャっ。これ、食べる気も起きにゃいにゃー…」
およよ、と鳴き真似をする猫。しかし、後ろにいる少年はじーっと醒めた目で猫を見ています。
「にゃー、にゃんとか言って、にゃーぁー」
ふえーん。と、猫は鳴きながら青年の背中に声をかけ続けます…
が。
「や、やっと…おいついた…!」
荒い呼吸に皆が目を向けます。
見れば…サングラスをかけた蚯蚓の姿が其処にいました。
「…んにゃ?」
目を瞬かせる猫。
それは、青年も少年も同じだったことでしょう…
「よーやく、追いついた、ぜっ!お前に、ついてく、からな!?」
ずいずい。グラサン蚯蚓が猫の方に這いずりながら今度は声を荒げます。
「…んにゃ?」
意味が分からない、と言ったような目で蚯蚓を見て…
「にゃんでにゃ?」
そのまま疑問を口にします。
その問いに蚯蚓は、だーっ!、と、うねうね動きます。
「そんなモン、お前に惚れたからに決まってるだろうが!」
「…」
凄く嫌そうな顔をする猫。
そんな猫に追撃の一言。
「良い肉してるからなっ!」
「カエレ!」
むがー!毛を逆立てて猫は蚯蚓を威嚇します。
思いっきり構えていて、戦闘態勢…だった、のですが…
「…ん…ぁ…?」
蚯蚓の様子がおかしくなりました。
青年と少年は顔を見合わせ…
猫の手に持っているモノを見て、納得がいきました。
「ぉ、お前、オレ達、喰ってるのか…?」
後ずさりっぽいことをしながら猫に尋ねます。
ぴこーん。
悪戯猫の発想です。
にや、と少し笑った気がします。
「んにゃー、そりゃー、美味しいしー、にゃー」
にやにやにやにや。
悪い顔をしながら、蚯蚓を焦らしていきます。
「ぁ、ぁー…オ、オレ、急用を…」
「待つニャ」
「ヒッ」
びくっ、と硬直する猫に、耳元(?)で囁きます。
「ちょうど良いニャ。今日一日だけ付き合うニャ…変にゃ事したら…」
ふーっ…弱めに息を吹きかけると、びくびく、と蚯蚓が震え、
「わ、わぁったよ!だから、頼むから、喰うなよ!?」
焦りが混ざった声で返事をしたのでした。
満足そうな表情の猫に、もう一度悪戯猫の笑みが浮かびました。
「…にゃ。今にゃら、さらとパノに勝てる気がしにゃー?」
…兎さんと少女…
兎さんの持つ斧から放たれる攻撃は強力で…
されど、少女の唱える魔法もこれまた強力…
破壊力で言うなら、この二人のコンビはPT内で最高ではないのでしょうか?
その提案に青年は少し考え…
「…良いのかな…?」
と、少し躊躇いましたが、猫はうんうん、と頷き、
「行ける、にゃ…!」
びっ、と親指を立てると、近くで戦う相手を探していた兎さんと少女の後ろ姿に声をかけました。
「にゃんにゃー!練習試合しにゃー!?」



…蚯蚓はその様子にカクカクと同じ待遇の少年の方を向きました。
「あの猫…いつも、あんなのなのか…?」
「…うん」
小さく頷く少年に、蚯蚓はカクカクと目線を戻し…
「…アイツについてくの、マジ辞めよっかな…」
「…それが…いい、と…おもう…」
少年の返答に、蚯蚓は決意を固めたのでした。

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自己紹介:
猫やってました。猫騎士、赤毛の猫、女好き淫魔猫。
今では何故かGやってます。

ヘタレです。
お絵かきがそれなりに好きです。ゲームも好きなんです。

リンク、アンリンク勝手にどうぞー。
万一リンクしていることが発覚したら何かの呪いの装備の如く相互リンク致します。
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