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猫だったのに、なんかGが湧いてきた
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「…この島が…False Island…通称、偽島。ですか…」
一匹の猫が船を降りる。
手荷物は中身のないポーチに、仕込み刃が施された棒きれ。
この島に至り、遺跡の中にはいる為の招待状…
そして、鎖が切れてしまったオルゴールが付いた猫のペンダント。
船の中、ずっとこのメロディを聴いて心を落ち着けていた。
この島にはロア家の猫は居ない…
助けて欲しかろうが、確実というモノはなく、ソレは運に任せるのみ。
「…」
しかし、この島に来ることを志願した猫にとっては、醜態をさらすわけにはいかなかった。
ロア家の為ではなく…バエル一族の為に。
「まずは…合流、しなければ…」



魔王の黒猫の言葉が蘇る…
「んにゃー…そうだにゃ。リィゼ」
「はっ…」
片膝を付き、頭を垂れる猫に金色の瞳は視線を向ける。
「ニャー達、ロア家と密接な関係のある…唐草九柳、は知ってるかにゃ?」
「は…名前だけは、存じております…」
「んにゃ、九柳の師匠、楓…霜月楓がちょうど島に行くらしいニャ。モノのついでに頼んでおいたにゃ」
「…」
時々、魔王の人脈というのが分からなくなる。
帝王学を学んだわけでもない、そして、上に立つことを決めたのは力があるから。
それだけのハズなのに、この魔王は決して相手を裏切ろうとはせず、またその人脈を残そうとした。
「…楓は体術に長けてて、闇の力を扱う事が出来るにゃ…少にゃからずバエル家の戦い方の参考ににゃるはずにゃ」
「…!」
まさか、魔王の口からその言葉が出ようとは。
バエル家は虎視眈々と上の地位を狙っていた。
上の地位に至るには力が必要…つまり、塩を送っているのだ。
「何故…」
…金色の瞳が少しだけ騎士猫を見ると、視線を時計台の外へと向けました。
「にゃんで、って。リィゼがあの島に行く理由がそれぐらいしか思いつかにゃーし」
「…」
…魔王は全ての猫を把握しているとでも言うのだろうか?
リィゼは確かにバエル家ではある。
しかし、若い猫で…魔王との面識も少なかったはずだった。
「それに、もーそろそろ、他にも強い猫が居にゃーと、ニャーもゆっくり出来にゃーし…にゃー」
ふぁ、と欠伸をする姿は、とても魔王にはほど遠い…黒猫の姿だった。


…メロディが流れる。
その甲高く、ゆっくりと奏でる音は耳に付く。
しかし、其の旋律は聞き慣れないながらも騎士猫にとっては平穏をもたらすモノだった。
一つの記憶を思い出せば、その後の記憶が思い出される…


「ふむ…」
二匹の老いた猫は騎士猫の言葉に小さく唸りました。
「偽島…アソコで三代目魔王は成熟したと言われておる…」
「寧ろ、この機会はチャンスと言えるのではにゃいか?」
二匹の猫は、騎士猫の方を見ずに、二匹の間で話を進めます…
「うむ…アリィゼや。行ってくるが良い…」
「しかし、アリィゼや。分かっておるにゃ?」
ようやく、二匹の猫が騎士猫の方を見た時には、其の瞳には何が映っていたのか…
「ロア家として…否、バエル家として…」
「恥ある行動は避け、騎士としての誇りを持て」
…一族の保身。己が何も出来ないのに対し、子孫には高望みする…
騎士猫は小さく頭を垂らした。
「はっ…」



「…しかし…」
賑わう人混みの中、猫は視線を落としました。
「私は…一体、何の為に…」
一族の為なのだろうか。
それとも、自分自身の為なのだろうか。
強くなる為の理由。
ソレが曖昧になっていた…
「…早く、見つけにゃければ」
顔を上げると、辺りを見回し…合流する予定の者達を探し始めた。


「…おや、主かの?」
声をかけられたことに気付けば、
「あなたは…」
其の目先にいたのは…頭に狐の耳が生えている、老いた女性…袈裟を纏っている…が居た。
「ん、霜月楓。初めまして、じゃよ」
探していた人物の名前に、猫は一礼し、
「…初めまして。魔王様から名前を伺っております…」
顔を上げると他にも集まっていた者達にも目を向ける。
「アリィゼ・バエル・ロア…と申します。よろしくお願いいたします」
「ふむ…」
そんな猫を見て、狐の婆さんは小さく呟きました。
「…以前会った猫とは、雰囲気が違うのぉ…」





…カチン。
辺りに流れていた旋律が止まった。
小さなオルゴールをポーチの中にしまうと、ゆっくりと立ち上がります。
「…宜しいですか?」
猫の見る先には他のメンバー達が…
「うむ。Nightly Campers…」

――夜の野営者…

「参ろうか」






初めの一足は左足。
そのまま南へと向かい…平原にさしかかった頃、皆の足は緩やかに遅くなっていき…
「…ここら辺で、テントを立てましょうか」
皆が頷けば、ソコが野営地となるのでした。




…薪となりそうな木を集め、放射状に広がらせるように置く。
火打ち石を使い、紙に燃え移らせ…火を付ける。
仄暗い闇の中、焚き火の光は辺りを照らしていた。
「…サテ…」
闇に溶けるような黒い毛並みを持つ狼…が辺りを見回します。
「ヤッパリ、カコマレルミタイ」
「まぁ…明かりがあれば、ソレにたかってくるのは道理ですから」
そういうと、猫は棒を取りだし…


しゃきんっ


仕込み刃を出し、鎌の形状へと姿を変える。
「さて…前後…で、分かれましょうか」
「ええ。ちょうど人数は同じのようですし」


「もっさぁぁぁぁぁ!!」


闇の中から襲いかかってくる動植物たちを迎え撃つように鎌を振り上げた。

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猫やってました。猫騎士、赤毛の猫、女好き淫魔猫。
今では何故かGやってます。

ヘタレです。
お絵かきがそれなりに好きです。ゲームも好きなんです。

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