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猫だったのに、なんかGが湧いてきた
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――時計台のあるレンガ街…


「さて…どうしたモノかにゃ?」
時計台の最上階。
皮のマントを羽織った黒猫が言いました。
向く先には…闇の中に映える12個の輝く瞳。
「ええ…ミュリィは、次は北国に行くそうで…」
間延びした声が聞こえると、同調したように他に声が聞こえます。
「いやはや。我々猫というのも難儀にゃモノですにゃ」
「そうですにゃー。あたしももーそろそろバカンス行きたいにゃー…にゃーんて」
「巫山戯にゃいでください。招待状を受けとった以上、誰か猫を出さにゃければにゃりません。ココで逃げたとあっては…ロア家を叩こうとする輩が増えるでしょう」
「んにゃー、それでもにゃ、誰か居るかニャー?」
凛とした猫の声が聞こえると、皆が押し黙ってしまいました。
そんな中、黒猫…は、闇を見つめます。
「それにゃらば…」
キリッ、と視線を鋭くさせて言いました。
「ニャーが行く!」
「「「「「「いけません!!」」」」」」
闇の中から聞こえる六匹の声。大合唱セール。
「あのにゃ、魔王様。あんたが行ったらココを誰が護るんですか!」
「ニャー達にばっかり雑務を押しつけにゃいでくださーい!」
「それに、あの島に行ったら、力の枷が働くと言うではありませんか!!」
ぶーぶーぶー。
ブーイングがひどい12個の瞳。
魔王と呼ばれた黒猫は溜め息をつきました。
「…だって、ニャーも遊びに行きたいのにゃー…」
いじいじ。
しかし、皆は容赦はありませんでした。
「「「「「「ミュリィが行ってる間、温泉に行ってたでしょうが!魔王様!!」」」」」」





…時計台ではすったもんだしていたのですが。
所変わってレンガ街の一角にある、古びた洋館では…
「はぁぁ…」
溜め息。
「はぁぁぁ…」
溜め息。
「「はぁぁぁぁ…」」
溜め息。
幸せが逃げますよ?
「しかし、我ら、バエル一族の血も…すっかり薄くなってしまった以上…」
「魔力ではロア家の中では劣ってしまう、かにゃ…」
二匹の老いた猫が顔を合わせると、溜め息と共に…今後の話をするのでした。
「我々が最盛期だった時、ロア家の中の血筋も最盛期だったとは…」
「しかも、バエル一族はその後衰えていく一方で、ロア家は衰える所を知らにゃい…」
「「はぁぁぁ…」」
二匹は溜め息をつくと、肖像画を見るのでした。
その肖像画には、漆黒の毛並みを持つ細身の猫…
闇を纏い、その手には血塗られた鎌を持っていました。
「…ご先祖様には、にゃんと言えばいいのか…」
「せめて、先代と同じく、六猫柱の座に帰らなければ…」



六猫柱…
この街では、魔王が支配…統治しているのです。
魔王に仕える…この街に住む猫達の中で、最も強い猫。
その六匹が六猫柱と呼ばれているのでした。

この、バエル一族…
初代魔王の時の六猫柱の一人だった為、その血筋は優れたモノと誇っていたのですが…
今ではその栄華も見る影もなく、イマイチぱっとしないのでした…
このところ、六猫柱にすげかわろうとする、野望を持った猫があまり居ないこと…
この六猫柱が強すぎること…
以上のことにより、六猫柱が変わる気配はないのでした。
しかし、この猫達…バエル一族は野望を持っているのでした。


…でも、実際は…ご先祖様の力は見る影もなかったのでした。


…さて。ココで島から帰ってきた猫のお話に戻ります。
テンガロンハットを被り、赤い髪を後ろで結った猫は、三人と一匹を後ろに付けさせて、その猫は歩いていました。
「ふにゃー…にゃ、懐かしいニャー」
目を線にしながら尻尾をくねらせる猫に、後ろを歩くバンダナを巻いた青年が言います。
「なぁ、本当にこの街にオメーより強いのがいるんだろうなぁ?」
「にゃにゃ、大丈夫大丈夫。その点に関してはバッチリニャ」
にゃはははは。笑う猫に青年はふん、と小さく笑い…
「ミュリィ」
紅い目を持つ金髪の少女が呼びかけます。
「にゃ?」
「大甲虫が、もさを食べようとしてるのですが」
…後ろを振り返ってみれば緑の髪の少年の上に乗っかっている大きなカブトムシの姿が。
「にゃー!もさは食べちゃダメニャー!」
がりがり。
針を何度も刺そうとしますが、猫の力が弱いのか、それともカブトムシの殻が固いのか…はたまた両方か。
その甲殻の上を針が滑る程度に終わるのでした。
「ったく」
青年が溜め息と共にカブトムシを持ち上げます。
…その、身体よりも大きいカブトムシを。
カサカサ動くカブトムシに、一同は深く安堵の息をつきます。
「…もう、もさも大甲虫に負けるほどやわではないでしょう?」
「もさー…」
助けられた少年は埃を払いながら項垂れます。
「じゃ、気を取り直して行くにゃ」
「って、おい。オレ、コイツ担いだままかよ?」



そんな一行の行く先から猫が一匹歩いてきました。
「ぁ、アリィゼ♪久しぶり、にゃーん♪」
赤毛の猫が声をかけると、声をかけられた…
金色の毛並みを持ち、要所しか護られていない鎧に身を包んだ猫…
が、おや、と目を向けます。
「ミュリィ、ですか…お久しぶりです」
一礼すると、後ろに居る三人と一匹に目を向け、
「…その方々は?」
「ぁー、ニャーの僕、にゃーん」
赤毛の猫はへらへらと笑いますが、約1名、冗談じゃない、といきり立ちますが…隣にいた少女に腕の肉を抓られ、すぐに溜飲はおさまったようです。
鎧を着た…騎士猫は目を丸くして言いました。
「…僕?ミュリィ、に…?」
普通なら驚くでしょう…
元々、この赤毛の猫は戦う気も、鍛練する気もない、いわば非戦闘員みたいな猫だったのです。
ソレなのに。
今では僕を従えるほど強くなっている、という事なのですから。
「…ミュリィ」
「にゃ?」
騎士猫は小さく震えながら言いました。
「…お手合わせ、願いたい」
「にゃにゃ?」
赤毛の猫は目を丸くします。
「確か…前は、私の方が強かったはず、です」
「んにゃ」
「もし…その力が本物ならば。どうやって手にしたのかを、私は知りたい…!!」
しゃきんっ!
腰から腕ぐらいの長さの棒を取り出すと、何か仕掛けがあるのか、細い刃が飛び出し…
騎士猫は赤毛の猫に飛びかかりました。

…捕らえた…!!

「ひゅっ…にゃー、危にゃいにゃー、もう」
「…!?」
確かに太刀筋の先にいたはずの猫は既に後方に着地しており…
与力で振られた刃は空を斬る。
「…確かに強くなっているようですね…!」
更に踏み込み、もう一度刃を振る…
しかし、やはり刃は赤毛の猫を捕らえることなく空を斬ります。
「ふにゃーん…にゃ、やるってゆーにゃら、容赦はしにゃいけどにゃ?」
赤毛の猫は、一度拳を作り…もう一度拳を開くと、指の間から針が飛び出しました。
「ハルシネイション!」
魔力が帯びた針は、騎士猫に刺さり…
「…っ!?」
騎士猫は違和感を覚えました。
頭が、ぐらっ、とし、視界がぼやけ…
「遅いにゃー、もーいっちょー」
ヒュッ…ヒュッ。
「くっ…ぁ…っ!!」
どんどん針が刺さり、気が遠のいていき…



「…気がついたかニャ?」
「ミュリィ…?」
騎士猫が目を覚ますと、目の前に赤毛の猫が居ました。
「…私が…負けたのか?」
「にゃにゃ、その様だにゃー」
赤毛の猫は立ち上がると、頭の後ろで腕を組みます。
「…どこで…」
「にゃ?」
「どこで、そんな力を手に入れたのですかっ!?」
騎士猫は赤毛の猫を見上げ、問いかけます。
「私は悔しい…今日という今日まで、私は、鍛練を続けてきた…それでも、一度は勝っていたあにゃたに負けてしまう…!」
そこまで言うと、視線を落とし…
赤毛の猫は視線を虚空に彷徨わせ…騎士猫に戻すと、
「…にゃ。まぁ、ニャーは今度は北の方にバカンスに行きたいしにゃ」
へらりと笑うと、目を細めて言いました。
「にゃ、実はニャ…」






「魔王様」
「にゃ?」
いじけていた黒猫に、白猫が声をかけました。
「一匹、島への探索を希望する猫が現れました」
「にゃにゃ?ホントニャ?」
「ぇぇ、その猫は…」



こうして、騎士猫はこの島へとたどり着いたのだった。

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非公開
自己紹介:
猫やってました。猫騎士、赤毛の猫、女好き淫魔猫。
今では何故かGやってます。

ヘタレです。
お絵かきがそれなりに好きです。ゲームも好きなんです。

リンク、アンリンク勝手にどうぞー。
万一リンクしていることが発覚したら何かの呪いの装備の如く相互リンク致します。
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