忍者ブログ
猫だったのに、なんかGが湧いてきた
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ふ…ふ…」
石像を従えた漆黒の髪。
”ソレ”は元々、この場に居なかったのではないか?
そう思わせるように…崩れるように消えていった。
ただ…
ソコに、紅十字を遺して。

「…勝った…にゃ?」
針を構えていた猫が臨戦態勢を解きながら、前で戦っていた兎に問いかける。
「…その様っすね…」
斧を担ぎながらその十字架を拾うと、兎は猫に振り返った。
「…ちょっと…消耗しすぎたっす。外に戻るっすよ?」



「ぁー」
猫は空を見上げながら、声を漏らした。
その声は何と形容すればいいのやら。
絶望しているのか疲労しているのか…
そんな濁った声を空に向かって出していた。

…ソレは、猫がこんな事をしている数時間前に遡る。
遺跡の不思議な力の一つ、疲労している者を外へと追いやる機能。
猫と兎はまだ微かに冷たさが残る風にさらされていた。
「…じゃ、みんにゃを探さにゃーと…」
そう、猫が兎に言った瞬間、遺跡はまた疲れ果てた者を吐き出した。
「…パノ…と、飛燕…!」
見覚えのある少女と青年の姿。
兎と猫は駆け出していた。


「…って事は…あの、トリスって言うのは…門番、かも知れないっすねぇ…」
食料を買い込んだ後、焚き火の周りで話し合っていた。
少女と青年…それと茄子はあの女と接触し、負けていたらしい。
しかし、猫と兎よりも後に出てきたことを考えると…
どうしても、時間軸がおかしい。
猫と兎の前で砂のように崩れ去った女…
それは、兎の手の中にある紅十字が示している。
そして、猫達が接触する前に引き返した…砂地の向こうに居たらしい二匹の獣と少年。
噂によれば、その女を倒した者が向かえば姿を現さなかったという。
「…宝玉を守る、ってゆー…アレ、にゃ?」
この島へ呼ばれた理由。
それは七つの宝玉を集めし者は願いを叶えられるというモノ…
招待状を受けとった者ならば。
この島に関して知っている者ならば…
少なくとも知っている知識。
「…つまり…その奥に…」
少女の声に猫は小さく頷いた。
「恐らくは…でも…」
猫は言葉を止める。
その言葉の続きを兎が繋げた。
「門番だとして…二人居たわけっすね。片方を倒して消えた事を考えると、アッチと繋がっていて…」
焚き火に渇いた枝を放り込みながら青年は言う。
「…まだ、先がある…?」
炎は皆の身体を映し、そして影を作る。
その闇は不安で濃く見えた。
「…門番に守られてるのはニャー達かも知れにゃー、って事かニャー…」


檻の中に百獣の王は居る。
しかし。
その檻がなければ、王は爪を振るうであろう…
力無き民はその爪の前に、赤を散らすことになる。
さて…
檻の中に王を入れたという人間。
檻の中に鎮座する王。
その檻は何の為にあるのだろうか…


「…はぁ」
もう一度、猫は深い溜め息を空に吐いた。
そして、一人…鳥男が遺跡の中に残っている。
猫達の中で、一番体力があった男で、まだ遺跡は戦えると判断しているのかも知れない…
しかし、姿が見えぬ者に対して、不安は広がっていく。
「…こうしててもしょうがにゃー…かにゃ」
拾った緑色の液体。
そして、石像から出てきた鉄の固まり。
それらで針を作っていく。
猫がこの島で手にした知識…
物と物とを組み合わせる技術。
そして、その先にあるのは…生き物すらも組み合わせることが出来る技術…
が、あるらしい。
猫は思う。
もし、ソレで”自分”が残るので有れば…
この島で、自分を越える自分を作れるのではないか、と。
そうすれば、下に行ける力が…
「…」
猫は頭を振った。
…何を考えているのだろうか。
元々、猫はこの島にはバカンスしにやってきたのだ。
ダメだったとしても、何も気にすることはない。
この遺跡の外は安全なのだ…
「…っ、にゃーにするにゃ、コイツー」
いきなりはたかれ、そっちの方向を向けば緑の髪を持つ少年が居た。
…猫の魔力によって使役している雑草…なのだが、その姿をまた使役の術の一種で変えさせていた。
この力も、この島で培った物なのだが。
「…もさ」
ぼそりと呟く少年に、眉間に皺を寄せつつ猫は言う。
「にゃーににゃー、にゃんも用事がにゃーのにはたいたのにゃー?」
キーッ。
歯をむくと、少年は口を開いた。
「…この島…生きて、いくには…力、必要…」
その小さく開かれた唇で。
「だから…もっと、強く…なりたい…」
その小さな声で。
「どんどん…強いの、寄ってくる…」
願望を唱えた。
「それ以上に、強くなりたい…」
「…」
猫は視線を落とし、溜め息をついた。
元々、猫は…
「ミルッ」
また、気分を変える前に声をかけられると、複雑な表情で顔を上げる。
猫が向いた方向には、金髪の少女が居た。
黒いリボンで髪を結い、緑のパーカーとジーンズという軽い格好。
…普通の人間と違うことは目が赤で染まっていたことか。
元々、この少女も猫の魔力によって使役している蜂だった。
雑草の少年よりも使役している日数は少ないモノの、純粋な針の使い方や針の毒は猫に勝るとも劣っては居なかった。
「練習試合をしたいという一行が居るようですが…どうするのです?」
猫は視線を落としたまま黙していたが…
蜂の少女はその様子に首を傾げながら言った。
「…どうしたのです?ミルらしくもない」
猫に背を向けると、その一行の方を向いた。
「何を考えてるのか知りませんけど…私達はトリスを倒したのですよ?壁に当たったワケでもないのに、不安になることはありますか?」
「…」
その言葉に猫は顔を上げ…小さく頷いた。
「そーだよにゃ…うん、そーだよにゃ」
「もさ…」
むすー、とする雑草の少年を尻目に、猫は蜂の少女に言った。
「じゃ、練習試合をしようかにゃ…さらは?」
兎の姿を探す猫に、少女は、
「は?」
首を傾げる。
「…いや、だから、さらは…」
猫が問いかけるも、その言葉は少女が指差した先を見た途端、閉口せざるを得なかった。
…すでに、兎は相手がいる用で…
「ぇ、にゃに?ニャー一匹?」
ぅぇー、と嫌そうな顔をする猫に、蜂の少女は小さく笑いながら言った。
「…私達もいるから三人です」



「…やれば出来るじゃないですか、ミル」
肩で息をする猫に、少女は微笑んだ。
…どうやら、島に来てからまだそんなに過ごしていないのか…
猫の方が場数慣れをしていた。
「にゃーん…ちょっち…」
しかし、猫一匹で大半を削っていた事に、じと目で少女と少年を見るが…
溜め息を一つ付くだけで終わった。
自分の力を越えたら使役などさせてはもらえないだろう…
つまり、自分がそれ以上に強くならなければならないのだ…
少女は苦笑しながら猫の肩を叩く。
「お疲れですか?…ホワイトデーで頂いたキャンディでも舐めたらどうでしょう?」
…時期はホワイトデー。
なのに。
「…」
彼氏と言える存在が居ない猫。
その味は少ししょっぱかった…と言うことはなかったらしい。
…辛うじて。




猫達は魔法陣に踏み込んだ。
あの女を倒せるほどの力があった方が良い…
もう一度、力試ししに行くらしい。
しかし…その前に、猫達は東へと向かっていた。
「噂っすが…さら達が居る魔法陣の近くで、隠し通路があったらしいっす」
兎の言葉に、皆目を瞬かせます。
話に寄れば、その奥には強い魔力のこもったローブがあったらしく…
その通路が見つけられたのはほんの一日前。
「まだ、何かあるかも知れないっすし…」


その壁に触れると、ぶおん、と音と共に腕がすり抜けた。
「…にゃ、この壁みたいだにゃ…」
…暗い廊下を抜けると、砂地が広がっており…猫達は辺りを見回す。
「…にゃー…流石に、人が多いニャ」
噂を聞きつけたのか、他にも人が十数人おり…
「…あれ?」
ふと、猫が声を上げると、
「パノは…?」
…少女の姿が見当たらず、きょろきょろと辺りを見回した。
しかし、その姿を確認することは出来ず…小さく唸ると兎は言った。
「まだ何かあるかも知れないっすし…手分けしてパノも探した方が良いっすかね」



「にゃー…にゃー、パノー、ぱーのー?」
砂を蹴りながら、辺りを見回す猫。
しかし、見つかったのは市販のポーションで…
ソレをバッグに入れると溜め息をついた。
「にゃー…此処に居にゃいんじゃにゃいのにゃ…?」
「そうですね…」
蜂の少女が額の汗を拭うと、ふと、とある方向を見つめていた。
「…何?今度は何にゃ?」
「練習試合、の様ですけど…」
「また、にゃー…?」
がっくし、と肩を落とす猫に蜂の少女は言う。
「…まぁ…何事も経験です」
溜め息と共に、猫が針を構え…


…ゾクッ…


「にゃっ…!?」
不意に感じた寒気に似た何かに辺りを見回す。
「どうしました?」
「にゃ…」
歯を噛みしめ、猫は眉間に皺を寄せていた。
「…嫌にゃ予感がする…」
「…?」
雑草の少年が首を傾げたが、練習試合はもうすでに始まっており…
「…無事だと良いのですが」
こんな時に全員で別れて行動したことに、後悔の念を抱きながら針を構えた。

拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
フリーエリア
最新CM
[01/25 トイレのG子さん(920)]
[01/21 952の人]
[12/04 トイレのG子さん(920)]
[12/03 アンリ(750)]
[11/15 トイレのG子さん(920)]
最新TB
プロフィール
HN:
ENo920PL
性別:
非公開
自己紹介:
猫やってました。猫騎士、赤毛の猫、女好き淫魔猫。
今では何故かGやってます。

ヘタレです。
お絵かきがそれなりに好きです。ゲームも好きなんです。

リンク、アンリンク勝手にどうぞー。
万一リンクしていることが発覚したら何かの呪いの装備の如く相互リンク致します。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
忍者ブログ [PR]